父の見舞いに行った。
末期の咽頭癌。
半年ほど前からハスキーボイスで、家族が病院に連れて行こうとしたが、頑として聞かず、先週、ようやく診断を受けた。
声はほとんど出ない。入院治療開始前の週末、家でいつもどうりに過ごしていた。
いつものブスくれた態度。もはや長年の付き合いの家族には、それが機嫌がいい悪いではなく、父そのものだと、家族の風景に化した父の姿。
「痛みは無い」という父の言葉に首を傾げる医者。
そうなんだよ。父は痛みを感じないわけじゃない。痛みを認めない、そういう人なんだ。
痛みを表現しても何も生み出さない。父はそう信じて疑わない。人とのコミュニケーションを嫌い、あかしやさんまを大嫌いだと言う父。
日常会話すら自分勝手な、ましてや僕達息子への教育なんて成り立たない偏屈なオヤジ。休日は常に競馬場。ギャンブラー的な自営業は貧乏大臣の繰り返し。酒は何十年も欠かさない。
最近では風呂に入らない事も定番化。
でも、あなたは自分の痛みを認めない。痛みを訴えない。それが父が生き様を通して僕に教えてくれた事。
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