土曜日, 4月 03, 2010

イノベーションの誤解



イノベーション(Wikipediaより)
イノベーションとは、新しい技術の発明だけではなく、新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革である。つまり、それまでのモノ、仕組みなどに対して、全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことを指す。

この手のビジネス用語は、漠然とした概念が、流行を経てパターン化し、そして忘れ去られる。
流行の最後に、ビジネス雑誌に「イノベーションの功罪」みたいな特集が組まれるのだろう。
そんな風に忘れ去られる前に書いておこうと思う。

最近のイノベーションの意味には二種類あると気がついた。
A.意識レベルのイノベーション
Z.行動レベルのイノベーション
の二種だ。
A.意識を変える
Z.違う事をする
とも言える。

本来の意味は冒頭のとおり、自発的な意識の変化および(それがもたらす)環境の変化だ。
Aが必須要件で、Zは結果なのだ。


で、こんな風に二種類に分けると、いつも組み合わせを考えてしまう。
こんな感じ。
-- 何も変わっていない状態
A- 意識は変わったけど行動は変わっていない状態
Z- 意識は変わっていないけど行動は変わった状態
AZ 意識も行動も変わった状態

そして、「A- 意識は変わったけど行動は変わっていない状態」というのは、いい意味で長続きしない。
じきに「AZ 意識も行動も変わった状態」になるはずだ。

ということは、現実にはイノベーションにおける結果としての状態は、
-- 何も変わっていない状態
Z- 意識は変わっていないけど行動は変わった状態
AZ 意識も行動も変わった状態(A- の状態を経て辿り着いた状態)
の三パターンになるということだ。

この中で、「Z- 意識は変わっていないけど行動は変わった状態」はたちが悪い。
短期的には、仕事なんだから意識の変化に関わらず違う行動をとることは可能だろう。
しかし、中長期的に意識は変わっていないのに違う行動をとり続けるのはどうだろうか。

意識は変わっていないのに行動だけ変える。
。。。
美味しいものを作りたいと思ってなんかいないのに、美味しいといわれるレシピで料理を作る。
喜んでもらいたいわけじゃないのに、ギャグをかます。
酔いたいわけじゃないのにお酒を呑む。
不健康極まりない。。

イノベーション真っ最中の企業社員の不祥事は、このパターンで多く発生するような気がする。
不健康な行動はモチベーションはもとよりモラルを下げるのだろう。


もともとイノベーションは、冒頭のWikipediaに書いてあるように、「自発的な変革」だったはずだ。
しかし、流行に乗った多くの経営者は「A.意識レベルのイノベーション」を謳いながら、「Z.行動レベルのイノベーション」だけを先行させ、結果はもとより行動そのもののを評価しようとする。
それは、本人が何も変わっていないから仕方が無いのだろう。
当然、本人が変わらないのだから、周囲の意識が変わったかどうかを知ろうともしない。
結果、イノベーションの進捗を行動面だけで知ろう人してしまうだろう。

Z-パターンだ。
行動面は変化しているから、無事にイノベーションを実践したと満足する一方で、ガタガタと崩れていくモラル。


こんな不景気でも、イノベーション周辺は活況を呈しているようだ。
ビジネスはイノベーションを商品ケースの最前に並べた。
自発的にしか起こりえないイノベーションが買えるのだろうか。

流行は行き渡り、もう、誤解の方が一般的な感覚になりつつある。
Wikipediaの内容も書き変わってしまうかもしれない。

イノベーションは誰かが起こすものではなく、「自らが起こす」ものだ。
きっかけを作るとか、間接的にしか働きかけることはできないし、してはいけない。

一度落ちたモチベーションやモラルを復活させるのは至難の業だ。
Z- は、-- より悪い結果をもたらすかもしれない。

だから、イノベーション推進とモチベーション/モラル管理はセットで進めなければならないのか。
そんな事を考える年度始めなのでした。


・・・・・
今週、同僚の訃報に接しました。
10年以上も前に1年ほどデスクを並べていた仲間。
当時、まさにイノベーションが進行する混沌の中で共に過ごした際の、彼の優しい笑顔を忘れることはありません。
ご冥福をお祈りします。

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