火曜日, 9月 27, 2011

尻に憑かれた男(ブラジル映画)


ブラジル映画である。他に何かブラジル映画を思い返せるか!っと考えてみたら、古い映画で見たのがあった。
リオのカーニバルが舞台の、「黒いオルフェ」がそれだ。
「黒いオルフェ」以来の、遂に我が家にやってきたブラジル映画が「尻に憑かれた男」だ。

と、そんな感動があったわけではない。
パッケージ写真の尻に惹かれただけで、ブラジル映画だと知ったのは、そのだいぶ後だ。
ただただ、「尻に憑かれた男」というタイトルに惹かれただけで借りてしまった。
(正直に言えば、4本借りる時に1本、この手のセクシー系を併せて借りる確率は高い。)


物語は、行きつけのカフェの店員のお尻に惹かれ、婚約を破棄し、仕事もそぞろになり、結果、自ら招いた事件に巻き込まれて死んでしまう男の話だ。
こういうのを演歌だったら哀歌とかいうのかもしれない。
哀歌を知らないから正しいかどうかもわからないが、そんな感じだ。


映画を見終えた時の満足度もたいしたことはない。
エンドロールを終えるまでも無く、さっさとプレーヤーの停止ボタンを押した。

ここのところの連休なんかで何本かDVDを借りて見たが、まぁ、これは中の下ぐらいの満足度だ。
でも、死に際に「中の中のDVDと尻男のどちらか一本を見せてあげる」と誰かに言われたら、迷わずこの映画を見せてくれ、とお願いする気がする。
いや、中の上を提示されてもこちらを選んでしまうかもしれない。
いやいや、上の映画を提示されても、結局、これを選んでしまうかもしれない。

だから、私の死に際に、この映画を差し出さないでおいてほしい。思い出させないでほしい。
痛切にそう感じる映画なのだ。


とにかく、惹かれる映画なのだ。
で、何に惹かれるのか、もう、丸二日ばかり考えているのだけど、何かに感動したわけでも、もう一度見てみたいわけでもなく、結局は、主人公の中年男が憑かれた尻が、いい尻だった、ということだけだ。
自分がそういう人だという自覚が無かったが、間違いない。尻好きだったのだ。

彼は、「この尻を見れば一週間何もせずに過ごせる」とカフェでカウンターの中の彼女の尻を見ながら呟く。
ついには、自分の目で見るに飽き足らず、目玉のオブジェを入手して、一緒に眺めるようになる。
自らの目で見ているのだが、気持ちは、オブジェの目を通して見ているのだ。
だからなんなのだ、いまいちピンとこないままストーリーはどんどん進んでいく。

目玉の親父を手に、カウンターの中で働く女性の尻を見つめる中年男。
うーむ。面白いシチュエーションではあるが、そんなシーンは、よーくよーく思い出さないと思い出せないぐらいだから、この映画の真骨頂ではない。

なのに、この、どうでも良い映画に惹かれている、この気持ちは、一週間ぐらい続くと確信できるのだから不思議だ。
もう一度言うが、感動も、もう一度見たい気も無いのに、この映画に惹かれている実感は続いているのだ。
気がつくと、あの主人公と同じように、「あの尻を思い出せば一週間何もせずに過ごせる」と呟いているのだ。


そういう意味で、このブラジル映画、なかなか恐るべしである。
「尻に憑かれた男」を観て、「「尻に憑かれた男」の映画中の尻に憑かれた男」になってしまっているではないか。

そういうわけで、一週間後にもう一度この映画を観てしまいそうな、いや、もう一度あの尻を見てしまいそうな、そんな自分に気がつかされる不思議な映画なのでした。
きっとこれは、たまにある、グルメ番組で紹介された何かしらを食べたくなる、そんな現象か。だとしたら、この映画は素晴らしい出来であることは間違いない。なぜなら、グルメ番組で紹介された何かしらを食べたくなるような事は、意外に少ないのだから。

※はみ出し
 ネットの映画評を見ると、割と、芸術的な視点で評価が高いようです。
 うーむ、だとすると、僕は、しょうもないスケベニンゲンではなく芸術がわかる男、ということになる!?

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