火曜日, 8月 24, 2010

The wave(ドイツ映画)


長年の疑問、疑問というより、考えても仕方がないと諦めていたことの一つに、いくら何でも天皇陛下万歳と戦争に突入していった日本の社会の空気、というのがあった。
生まれてからこのかた、一度だって、そんな風に社会が変わるなんて想像したことがない。
想像しても理解を超えた話、感覚でしかない。

理解できない諦めと同時に「まぁ、昔の話だから」とか「当時は貧しかったから」とか適当に、納得したつもりで考えを停止していた。

今夜、その長年の疑問は晴れた。
2008年のドイツ映画「The Wave」を観たのだ。

実話を元にしたこの映画、一週間、学校の実習での実習。テーマは独裁。
独裁に欠かせない事柄をクラスの授業の中で一つ一つ実験として体験していく。

教師を「○○様」と呼ぶ。ここから独裁の一歩が始まる。
許可なく発言はしてはならない。発言は起立して行う。

最初こそ戸惑い嫌悪すら感じている現代の若者たち。
しかし、"団結"の実験のあたりから雲行きは変っていく。

団結そのものがもたらす高揚感、集団にとって自分が大切な存在だというリアルな感覚、、、
ちょっとした快感から制服や仲間内でしか通用しない挨拶、そんな些細なことを積み重ねながら、まさに「独裁」が完成する。

実話が元になっているだけあって、その積み重ねの過程は至極自然な流れだ。
観終わってもなお、信じられないのだけど、確かに、現代の西側社会で、しかも若者相手に独裁は完成した。

わずか一週間で悲劇的な結末(まだ小規模とはいえ、ナチスや大日本帝國を思い起こさずにいられない結末)を迎えるその過程は、私たちの今のこの社会が、いとも簡単に後戻りできることを納得させられる。
「いやいや、それは無いでしょ」と、ツッコミを入れたかったのに、無残にもその期待は打ち砕かれた。

なんだったら、明日にも、自分が独裁者にすらなれそうな、そんな気持ち悪い感覚すら覚える映画でした。

感動をもたらす良い映画、というより、人間社会は脆いと実感するための教育映画、です。
選挙には真面目に行きましょう。

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