日曜日, 3月 27, 2011

バーサタイリスト。少しわかった気がする。



僕はテスト嫌いだ。
テストまでの間に、たくさんの知識を詰め込む作業が苦手なのだ。
毎日毎日、コツコツと積み重ねていく努力が苦手なのだ。

小学校の頃、毎日漢字の書き取りをする宿題が出たことがあった。
毎日1ページか2ページか、とにかく決められた分量の漢字の書き取りをする、そんな宿題。

この手合いが一番嫌いだった。
そんな宿題を考えつく先生にも、そんな宿題用としか思えない書き取りノートにも、そして、理不尽な環境に救いの手を差し伸べない両親にも、悪意を感じた。

その時は、締切間際に、書き取り用ノート日数分のページの各マスに、一・二・三・四・・・八十一・・・二百十三・・みたいな感じで、漢数字でページを埋めていくことを思いついた。

見方によっては大胆なヤツ、と思われるかもしれないが、実際は、この方法はきっと誰かに怒られる、とビクビクしていた。

だから、とりかかる前に親に相談した。

親は、「好きにすればいい」と言ったので、それを良いことに実行に写したのだ。
決して、大胆でも豪快でもない。ビクビクしながらもサボりたかっただけだ。

書き始めた。
書き始めて気がついた。
これは、後半に行けば行くほど、一つの数字で三マスも四マスも埋められる。
効率が良いじゃないか、これなら、宿題を終えないと見られないテレビはすぐに見れるじゃん、などと思ったものだ。
↑本当にアホだった。


あるいは、高校の合唱部の体験入部の時もそうだ。
女子もたくさんいて華やかで、明らかに天文部なんかとは違う香りのする合唱部のイメージとは裏腹に、彼らは毎日、運動部並みの腹筋とか腕立て伏せをしていた。
これが嫌で入部を断念した。

音楽は好きだったけど、女の子も好きだったけど、毎日のあの努力が自分には耐えられないと思った。
信念を通すために、孤高の人となっていった。

漢字書き取りを忌避してた頃とは違い、このころは、僕には無理、って素直に思えた。
でも、入部確定モードで先輩に散々奢ってもらったりしていたので、「音楽性が合わない」などという、お前はプロミュージシャンかっ、という理由で入部を辞退した。

そんなわけなので、一貫して脳も筋肉も非アスリートな生き方で今日まで生きてきてしまっている。。。



話を戻す。

知識って、携帯でググれるようになった今、それほど重要じゃなくなっている。
正確には、「字面で表せる程度の表面的な知識」はそれほど重要ではなくなっている。
ググることさえできれば、誰でも百科事典好きの小学生ぐらいにはなれるのだ。

大学入試など様々な試験だって、ググらせて貰えれば、知識を問う問題にかなり対応できる。
最近の大学ではレポートもそんな感じなので、知識ではなく知恵を問う課題に変わってきていると聞いた。
入試なども知識を問う問題ではなく、「知恵」を問う問題に変わっていくだろう。


では、知恵とは何か。知識は要らないのか?
知恵は、持ちうる様々なジャンルの知識、と、様々な経験、そして想像力、それらから結び付けられる「新たな知」なのじゃないか。

料理好きで化学好きな人が、調味料を加える順番を一般常識と変えてみたらおいしい料理が出来た、とか、そんな感じ。
いや、料理好きで化学好きな人が、今問題になっている原発の燃料棒冷却に対して、化学の知識と料理の経験と普段は妄想にしか使ってなかった想像力を活かして新しい冷却方法を考えつく、そんな感じ。

当然、一見関連しない知識と経験を、未経験の分野に結び付けられる「柔軟な考え方」、も必要だ。


お、ようやく本題。これって、バーサタイリストのことではないか!
バーサタイリストなんて言葉があろうが無かろうが、既に、世の中はそっちの方向に進んでいるのだ。
(だから、そんなモヤモヤした新しい事柄を表す言葉としてバーサタイリストがあるのだろうが。。。)


この震災でも様々な「専門家」がメディアに登場したが、これだけ注目される災害だと、彼らの一言一言はリアルタイムにネット上で"知識レベルで"検証されていく。
すぐさま、発言が正しいかどうか議論され、信頼できるソースにたどり着くと収束する、を超高速で繰り返していた。
2チャンネルでは1000で終了するスレッドが100以上続いていたから、便所の落書きとはいえ、既に10万件以上のコメント/レスがあったのだ。

そんな中で一定の評価を得る専門家と、どんどん信頼を失墜していく専門家とが明白になる様子が興味深かった。



もはや、どんなに知識量が多くても、それを誠実にきちんと伝えられなければ価値がないのかもしれない。
ネットでの知の共有により、「似非(エセ)専門家」や「肩書きだけの人」には厳しい時代になるのかもしれない。

そういう視点から「バーサタイリスト」を見直すと、とても納得感が得られる。
知識が不要と言っているわけではない、経験だけが重要と言っているわけではない。
ましてや、妄想力が全てなんてわけじゃない。

価値のある知、知恵を創造しようとする人間像がバーサタイリストなのだ。


バーサタイリスト=「知恵」(地頭力)=「それなりの知識」+「それなりの経験」+「結合・発展させる力」

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