日曜日, 1月 18, 2009

請負と派遣

今朝のテレビで「派遣(雇用形態)の功罪」が議論されていた。
細かい法的な話はよくわからないが、この数年前に僕が担当していた現場(システム運用のプロジェクト)で起きたことを書き記しておこう。
(きっと、この先数年で、もう一度揺り戻し?がありそうだと感じたから。)

●背景
・2006年頃
・僕が担当したチームは、社員、派遣、請負の要員がプロジェクトメンバーとなるチーム。

●発生したこと
・社会的に「偽装請負」が問題になり対応を迫られた。
 (業務上、直接指示が出来るのは派遣者。派遣者・請負会社の人が混在するチームで、契約別に指示をするような実態は好ましくなかった。)

●考えたこと、条件
・派遣形態の特徴
 派遣のほうが「直接指揮」できるので従来の運営が法的に問題にならない。
 一方、派遣では「3~5年後に社員化」が条件になる可能性がある。(事例が少なくリスクとして捉えた)
 キャリアプランが示しにくい。モチベーションコントロールが難しい。
・請負形態の特徴
 直接指揮できなくなる。
 直接指揮できないため、プロジェクト運営全般の見直しが必要になる。
 契約内容が曖昧で実態に合っていない。
 契約通りに業務を遂行した場合に、品質の変化や突発的な対応で柔軟性が失われる可能性。
・社員の形態
 指揮運営できる社員と粛々と担当業務をこなす社員がいる。
 上から目線の社員の態度は改めなければならない。(派遣者、請負先の方が専門家である事が多い)
 年配者や業務不適合者であっても、リスペクトできる空気を作らなければならない。(契約見直しは考えられない)

●やったこと
・方針の検討
 直接指揮をするか、しないか、を考えた。
 結論は、全面的に請け負い形態へ転換する、としました。
- サービスが複数拠点に及ぶ
- 指示は社員から出さなければならない一方で、社員(リーダークラス)の確保も困難な地域の存在
- キャリアパスを明示してあげられない(モチベーションを高めてあげられない)
・請負先の選定、条件など
 請負先が現場マネジメントができるかどうか、即時できないとしても体制を構築できるか
- 請負先が適切なリーダーを配置できるか
- 請負先が適切な後方支援体制を配置できるか
- 請負先が適切な「契約内容の見直し」「契約内容の確認プロセス」を構築できるか
- 請負先が適切な範囲で契約金額を見直せるか。
- 請負先がビジネスチャンスがあると考えるかどうか。
・派遣先の縮小および契約解消
- 現契約満了で解消の場合のリスクを見極める。
・社員の役割見直しと本人の「納得感」の醸成

●どんな風に進めたか
・コミュニケーション
 契約先と話す前に、チームメンバー一人一人と「何をしたいか=仕事に何を求めるか」というテーマで面談を繰り返した。
 上記の結論も、実際に話した結果、派遣形態の人と請負先の人のカラーの違いから導き出せたようにも思います。
 社員に対しては、納得してもらえないベテラン社員などには、繰り返し繰り返し話を聞いて、提案して、場合によっては業務変更などもしてもらいました。
 結論を出した上で、数社に渡る交渉を開始しました。 
・交渉
 請負先の交渉を最優先に始めた。新しい運営形態では請負先ありき、になるから。
 ビジネスチャンスと捉え前向きに取り組む体制のある会社はスムーズに話が進みました。
 驚いたのは従来からの派遣的な請負形態を望む会社の存在でした。請負先としても、現場リーダーの配置など現実的に対応できる「人」がいるかいないか、が、鍵になっていました。これは、法的な問題も含め、一緒に新体制を検討していきました。当然、このケースは1
年以上かけて体制を作っていく事になりました。
 請負先の絞込みも検討しましたが、結果的に、そこまでは進みませんでした。
・レポート
 交渉に先立ち、定期的な報告書の全面的な見直しを実施。
 契約に沿った業務の数値化
 請負先がアピールしやすい項目の設定→「その他/要協議事項」を設定しグレーゾーンをアピールし易い仕掛けをした。
・契約
 従来の契約書内容改定案を作成、請負先との協議、見直し条項の明文化、定期会議体の契約明文化、定期会議体内容の明文化、、、、
・キーとなったこと
 請負先にリーダーを務められる人材がいるかどうか
 請負先にリーダーを支援する体制があるかどうか

●移行してからの気づき
・メンバーとのコミュニケーションの変化
 当然、業務に関しては直接メンバー個々と具体的な話をする事は難しくなりました。
 単なる「相談」を聞き、内容によっては「問題の種」だけを請負先に伝え、そんな風に対応していました。
・請負先とのコミュニケーションの変化
 「対等である」事に慣れてもらうのに時間がかかりました。
 レポートを軽視している、馴れ合い、を感じ、時にイライラすることもありました。
・社員とのコミュニケーションの変化
 請負先との契約管理などが新たな業務として発生。慣れない社員は苦労していました。
 社員間の相互リスペクトは、「リスペクトしましょー」と放っておいてはできませんでした。管理上も優先順位を上げて自ら対応する姿勢を見せ続ける必要がありました。
 ←具体的には、リスペクトされ難いキャラクターの社員にこそ時間を割いて会話しました。っていうか、それしか出来ませんでした。。。
・主にモチベーションを理由に派遣形態をやめたのは、今思うと、悪くない選択だった。

そんな感じだったなぁ。
いずれにせよ、法的な要請から対応せざるを得なかった、というのが本音。
以前は、大企業は来るIT化を見越してITの専門学校を立ち上げ、その卒業生を自社のIT要員に迎え入れたという。
ビジネス展開は「人の成長」に合わせていた時代もあったのだ。
人の生きるペース、というものを考えられるといいのになぁ、と、ゆっくり時間が流れるというこの島で考えるのでした。

0 件のコメント: