金曜日, 1月 23, 2009

アラカワさん



沖縄のアラカワさんは、新川さんという苗字が多い
つい、荒川さんと書いちゃいそうなんだけど、新川さんなのだ。

と、どうでもいい話はおいといて、ここ石川の街の商店街にある陶器屋さんの話。

そもそも、この街の商店街は、整備された大通り沿いに広がっているのだけど、「車社会」の沖縄では、郊外の大型スーパーが人気で、地元の商店街というのは、今ひとつ活気はない。
チラホラとシャッターが閉まってる店もあるし、空き地になっていたりする。

いつ開いているかわからない店が多いのだ。
朝晩前を通るときに閉まっていて、じゃあ、日曜日に行ってみても、やっぱり閉まっていたりするのだ。


そんな商店街の中に、小さいけど綺麗な陶器の店がある。
それが「陶器アラカワ」だ。
この間の日曜日、毎朝毎晩、この店の前をチャリで駆け抜けていて、気になっていたこの店を訪ねた。
但し、「やっているのか閉まっているのか半々」ぐらいに考えて訪ねた。

気になっていたのは、
・大切な人へ贈り物を考えていて沖縄陶器はよさそうだと思っていたこと。
・ちょうど、ご飯茶碗が割れたばかりだったこと。
・どう考えても、観光客を相手にしているようでもなく、地元の普段使いでもなく、、、場違いな雰囲気のお店という感じがして興味があった。
・チャリの行動範囲では数少ないというか、唯一の陶器屋さん。
などが理由だ。


店の前に辿り着く。入り口は全面ガラス張りで、といっても、普通のサッシで質素な感じ。
ただ、店の脇に、味のある字で「陶器アラカワ」と書いた看板が掛かっていて、これが一気に雰囲気を出してくれている。
サッシを開けると開いた。開店していた。よかった。

店に入る。まずオペラがBGMというより音楽鑑賞レベルの音量でカーテンで仕切られた奥から聞こえてくる。
そういえば、沖縄に暮らしていてオペラを聞くなんて事はなかった。いや、そもそもお店のBGMがオペラっていうのは、なかなか珍しいではないか。
荘厳な歌声の中、割と控えめに飾ってある陶器を眺める。
僕は陶器に関しては、「ずぶの素人」で、眺めるといったら本当に眺めるしか出来ないのだ。
(じゃあ、陶器以外で玄人なものがあるかというと、それもないわけだが。。。)

オペラを聴きながら、棚に並んでいる陶器を見ていると、奥から作務衣を着た年配(60才ぐらい?)の方が出てきた。
聞いた事には丁寧に応えてくれるが、商売っ気はあまりない。
かといって、とてもにこやかに話してくれるので、居心地が良い。

そして、なんと、目の前に並んでいる陶器たちは、その作務衣オジサンが自ら作っているということがわかった。
店の奥は、作業場を兼ねているようだ。
(作っている人と話ができるなんて感激!)

陶器の特徴やら、オジサンの陶器を始めたきっかけやら、店にはあまり客は来ないが何店か陶器店に卸しているとか、そんな話を聞きながら、質実剛健、っていう感じの陶器達と、そのオジサンを見比べていた。
そして、僕も、去年からこの街で暮らしていることや、仕事はこの店の近所だとか、自転車で毎日前を通っているとか、そんな話をした。

僕が去年からここに暮らしていると話したら、このオジサンは、生まれも育ちも、ここ石川の人だった。
この街の素人の僕に、この街の大玄人のオジサンだ。

オジサンは、このお店から、山の上にある石川高校に通っていたのだという。
高校当時のマラソンのコースまで教えてくれた。
僕がギブアップしてアシスト付き自転車にした、あの長い坂道を、歩いて通っていたのだそうだ。
この街の栄枯盛衰を(返還前は裁判所もあるほど沖縄の中心だったのだそうだ。映画館にいたっては5軒もあったそうだ。今は貸しビデオ屋さんすら5軒も無い。。)


このオジサンの手が、この造形を産みだすのかぁ。
もう少しお爺さんだったりすると、そのまんまドラマになるかもしれないなぁなどと失礼な事を思いつつも、やっぱり、なんか感慨深いものがあった。
作った物を前に、作った人と話ができる。なんて贅沢なんだろう。

ただ、残念な事に、茶碗も、贈ろうと思っていたマグカップも、やはり欠けていて欲しかった灰皿も、売り物には無かった。
泡盛を仏壇に供える際の急須?や、ぐい飲みや、料亭でつきだしを三品ぐらいスカスカに並べるような長ーいお皿、花器、そんな感じの品揃えだった。


諦めつつマグカップの話をした。
するとオジサンから予想もしない返事が返ってきた。

「ちょっと先になるけど、次回、マグカップを焼いてみますよ。」
(窯に火を入れる時期の都合で、一月ほど先になるようでした。)


感激。
地元の店に寄って良かったと思った。

感激のあまり、ご飯茶碗にはカナリ小さいとは思ったが、仏壇に供えるようなご飯茶碗を買った。
(湯飲みでもないし、なんなんだろうか。。。)

うるま市石川 陶器「アラカワ」をよろしく。

※後日談
翌々日、作る時のヒントになれば、と、マグカップをどんな人が/どんな風に使うのか、を、メモに書いて持っていきました。
とても喜んで引き受けてくれました。

※※沖縄の陶器の種類など
陶器(荒焼;あらやち)→1120℃ あまり釉薬(ようやく)は使わない
陶器(上焼:じょうやち)→1200℃ 釉薬を使う
やちむん→沖縄弁で「焼き物」のこと

※※※はみ出し
 ずぶ=十分の、完全な、全くの。
 十分濡れた→じゅうぶんぬれた→ずぶぬれ。ほー、なるほど。

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