水曜日, 11月 24, 2010

大手貸ビデオ屋さんの狙い


近所の超安貸ビデオ屋さんも、概ね、借りたいものが無くなってきて、最近は通勤途中にある大手貸ビデオ屋さんに行くことが増えた。
その貸ビデオ屋さんでの話。

ここでは、よく、「○本で1000円」セールをやっている。
そうすると、こちらも、「5本で1000円だったら、5本借りちゃう~」となって、ま、とっても素直な消費者として、貸ビデオ屋さんのマーケティング部門かコンサルタントか消費者庁かなんかに表彰してもらいたい、そんな感じ。

で、不正確な記憶なんだけど、確か、以前は、「新作旧作なんでも○本1000円」とか、「旧作○本1000円」だったのが、最近は「新作□本、旧作△本合わせて○本1000円」とか、まぁ、いくつかパターンがあるようだ。

そして、先日のそのビデオ屋さんでの出来事。

もはや大手貸ビデオ屋さんに行ったらデフォルトで○本1000円セール。
今回は、四本らしい。で、太っ腹、全部新作でも良いということらしい。
「ふむふむ。じゃあ、珠玉の四本を選んでやろうじゃないの」と鼻の穴も膨らむ。

貸ビデオ屋さんでの楽しみは「選ぶ楽しみ」だ。
僕の場合は、よくよく考えると、絶対に借りない分野がある。
ここ、北九州に越してきてからは、任侠物が割と目立っていて、パッケージを手にとってみたりまではしたのだけど、結局、借りる気にならない。
あとは、アイドルが出演していることだけがウリのやつも借りないかな。
そして、間違っても借りないのが、「ホラー」だ。
もともとホラーは借りなかったけど、今では神社の中で暮らしている事もあって、そーゆーのは避けたい。避けねばならぬ。


一方で、時間をかけてじっくり棚を見るのが、「ドラマ」だ。中でも、"実話"に弱い。
あとは、その時々のマイブームがあって、戦争ものを見続けることもあるし、やたらタイトルの長いヨーロッパのアナログなアクション系「狼の涙が男達を濡らす。そして、血まみれの羊たちがいなくなった。」みたいな長いタイトルのやつにハマった時期もあった。最近は、クラシック音楽作曲家系にハマっている。

そんな風に、独り、あーだこーだと考えながら珠玉の四本を選び出す。
週末の価値を左右する珠玉の四本だ。

三本決まった。あと一本。
あれこれ探していたけど、ようやく、二本に候補を絞り込んだ。

「今週観るならどっちよ、どの気分よ」とか「明日の天気に似合うのはどっちよ」とか、要するに、どうでもいい事で悩みながら最後の一本を決めるのだ。

結局、ちょっと前のマイブームで見逃していた一本に四本目が決まった。
何か、大仕事を終えた爽快感と若干の疲労感を感じながらレジに進む。

帰って観る頃には忘れるんだけど、今なら、今日のチョイスのポイントを説明できる。が、誰もそんなオジサンの話し相手にはなってくれはしない。

仕方ないので、レジに並ぶ。
会員カードを出し、店員さんからの、ポイントは?との問いに
「貯めといて」
と答える。

若い店員さんはバイトだろうか。いつの間にか、僕は、こういう店のバイトの子達の親の年代になったんだなぁ、などと考えながら、レジのピッピッ音を聞いている。

計四本のレジ打ちが終わったとき、そのバイトらしきレジ打ちの女の子が僕に聞く。まさかの「今日のチョイス、イケてますね。ニコッ。」などとはならない。

「ただいま、当店では"新作四本1000円キャンペーン"をやっておりまして、お持ちいただいた四本のうち二本が新作、二本が旧作となっております。この新作二本だけでXXX円になりますので、新作を二本追加したほうがお得ですがいかがなさいますか?」

僕の思考は彼女の言葉の速さに追いつけない。
若い女の子だと油断していた。実は、キャンペーン内容を説明させたら日本一早口なのではないだろうか。

とにかく整理されずにいた僕の頭の中から捻り出てきた言葉はこうだ。
「えっと、あと二本、新作を追加すればお得なんだね?じゃあ、すぐ二本選んできますね。」

大手貸ビデオ屋さんのマーケティング部か雇われたコンサルの勝利の瞬間だ。
既に選んだ珠玉の四本のうちの二本を選びなおす、という選択肢は僕には考えられなかった。二本追加だ。

しかもだ、なんだかわからないが、一旦レジに並んだ以上、次の二本は超速で探さなければならない使命感みたいなものを感じてしまっている。
僕に残された、この大手貸ビデオ屋さんでの滞在時間はもう残り少ない。と感じてしまうのだ。

そそくさと、新作コーナーに舞い戻る。

こーゆー時の選択は、珠玉の四本の時とは全く違う。
さっきもザーッと見た棚だ。ちょっと気になったヤツがあるじゃないか。選択ハードルを下げれば良いだけだ。

一本はこのイマイチだけど話題作にしよう。
もう一本は、さっき、おもわず手にとってジッと見つめてしまった、内容はよくわかんないけど、きっとミステリー的なやつ。
ジッと見つめたのは、そのパッケージの女優が、普通に洋服を着ているくせに扇情的な感じを受けたからだ。

そうして、僕は四本セールだったのに、計六本を借りて家に帰る。

そんなこんなで、帰って一番最初に観始めたのは、結局、その扇情的な感じのパッケージの映画。
そのDVDをセットしながら、自分ながら笑ってしまう。「結局、これを最初に観るのかよ!」。

ちょっと高揚した気分もありつつ、映画を見始める。
確かにパッケージの写真の美女が出ている。なかなか色っぽい。

そして数分後、その美女が人肉を食べる悪魔に変貌し、僕はDVDを止めることも、その美女が変貌した恐ろしい悪魔のシーンに目をつぶることもできず、ただただ、寝付きの悪い寒い夜を迎えることになったのでした。

「美女に気をつけろ」
その映画のテーマはしっかりと僕の心に刻み込まれました。

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