日曜日, 2月 01, 2009

V-Pianoがもたらしてくれるもの

エレピ→仮想ピアノ

ヒトは模倣し、模倣の先に新たな価値の創造が訪れる。
なーんて話は今さらなんだけど、新型エレピの話。

今までのエレピは、サンプリングした本物のピアノの音を音源に使っていた。
だから、音だけで言えば、サンプリングした音の再現性が重要だった。
でも、この方式には限界がある。
サンプリングした音源以上のピアノにはなり得ない。
サンプリングは、どこまでいっても「本物」と同じにはならない。
そして、再生するのも、「スピーカー」なので、やはりどこまでいっても「本物」と同じにはならない。


とはいえ、デジタルピアノもコンピューターの処理能力や記憶容量の発達に合わせ、サンプリングレートを向上させたり、そんな進化を遂げてきていたんだろう。デジカメなんかと同じ進化。


そのサンプリングした音源を使って、ちょっと加工してあげてシンセサイザー的な使い方ができたりして、それはそれで楽しかった。
なにより、調律がいらないのはよい。あと、軽いのも。あと、ボリューム付き、ヘッドフォン対応可能、も良かった。
現実の生活にマッチしていた。

これに満足していたはずなのだが、この満足が霞む様な新エレピが発表されました。
それは、Roland "V-Piano"。

この音源は、単純なサンプリング音では無い。
鍵盤を押す→ハンマーが弦を叩く→弦が震える→フレームが震える→響版に響く、
このプロセスをシミュレートして「ピアノの音」を再現しているのだそうだ。

何が違うかというと、多分、こうだ。
今までのエレピは出来上がった温泉饅頭店頭販売みたいなもので、同じ味で食べ続けるか、せいぜい、トッピングするしかなかった。
V-Pianoは、目の前で温泉饅頭"実演"販売みたいなもので、その場でアンコを選んだり皮を選んだり、蒸し方を変えたりもできるのだ。
うーん、例えがあまり適切ではないなぁ。でも話を続けよう。


ということで、このV-Piano。調律もできるのだそうだ。
複数ある弦の張りやハンマーの固さ、そんなのを調整できるのだ。

メーカーでは「歴史的なアンティーク・ピアノからモダンなコンサート・グランドピアノまで、そのサウンド・バリエーションの可能性は実に多彩」と発表しているが、そんなもんじゃない。
現実の調律では「あり得ない」チューニングもアリだ。
実際、"Vanguard"モデルでは、全ての弦を銀製の弦にした、"あり得ない"ピアノの音も再現できるらしい。


子供の頃、たまに。調律士さんがやってきて家のピアノを調律していった。
でも、「きちんと」調律はしてくれるが、子供の僕が興味があったのは「きちんと」ではない。
あの調律途中の、弦の端のねじを回しながら変化していく音、救急車が通り過ぎる時のような「ポン→パン→フォワン」みたいな音、あれを好きにやりたかった。

このV-Piano、実際にPCと繋いで、ハンマーや弦のCGを見ながら調整することも可能のようだ。
※弦の張りを一本一本調整できるかは不明。

このエレピで理屈を学んで、調律士を目指す人も出てくるかもしれない。
新しいアコースティックピアノを作る人が出てくるかもしれない。

V-Piano登場の凄いのは、そこだ。
V-Piano自体の演奏もいいんだけど、それよりも、シミュレーションから刺激を受け、アコースティックピアノ自体への興味や、新たなアコースティックピアノの創造へと、人の興味を広めたり深めたりする事。


そのうち、どこかで触ってみよう。

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