火曜日, 4月 05, 2011

○子にキス そして大火傷 まだ痛む





そうなんです。大人のヤケドです。

かれこれ、一週間ほど前でしょうか。
出張で横浜に滞在していた時のことです。
都会の夜で、一瞬の心の隙に、、、今も、痛む心と体。
もう二度と同じ思いはしたくないから、今、ここに書き残します。


その日の宿は、横浜でした。
いつもであれば、通い慣れた店で夕飯を頂くのですが、言うまでもない最近の関東地域の抜き差しならない状況は横浜でも顕著で、なぜだか私の行きつけの店に限って臨時休業なのです。
それは横浜だからこその本格的な中華料理店。
行きつけメインの店は休業。ならばサブの店も、と、この、なんの関係もない両店が揃って臨時休業。
理由は不明ですが、恐らく、彼らの母国から避難勧告が出ているからだと思います。

そんなわけで、その日は、気にはなっていたけど機会がなかった店、に入ってみました。

そんなアクシデントから新たな出会いがあるものです。
それが都会の夜、大人の都会の夜というものなのでしょう。

そのお店は、「刀削麺」「四川」の、僕的ツボのキーワードが網羅された店です。
そして、店に入ると、カタコトの日本語。これもツボです。
よしよし。

そして、出張中のオヤジとしてはやらなければならない行動の一つ、「普段は一人で酒なんか飲まないけど、出張中なら一人でビールのんだりしちゃうんだぞー」を実践しました。

生ビールを頼みます。お、お得なセットメニューがあります。
よくある、晩酌セット的なやつです。これを頼みます。

まずはビールが登場。
ビールジョッキをガッと口に運び、いつも自分に課している1ゴク2ゴク・・・10ゴクを完遂。
素晴らしい達成感。
今のこの10ゴクの勇姿は、技術点・芸術点共に世界最高レベルだったに違いありません。

そんな自分の姿にうっとりしながらビールを飲み進めます。

待ち人はなかなか来ないものです。
ビールが終わりかけた頃、ようやく登場です。

とてもグラマーでリッチで水々しく若々しい一品。
そうかそうか、小麦色の君は僕のような日本人向けの子なんだね。
(大陸のかの国では肌を大切にしてなのか、焼かずに茹でるのがスタンダード)

小皿に醤油とこの店自家製のラー油をたっぷり注ぎます。
箸の先で、小麦色の子を摘みます。
平らな部分の小麦っぷりと対照的に、プニプニ膨らんだ部分の白さは際立っています。

もう、堪りません。
いい大人、優しい大人、わきまえた大人、紳士的な大人、焦らない大人、そんな大人が一気に我を忘れてしまいます。

もう、鼻の下は限界まで伸びきっています。
プルンプルン震える子は箸の先から逃れようとするも、40数年間の箸さばきに、赤子同然の子は逃れるべくもなく、、、、

ついに、僕は大人であることを忘れ、ンーっと突き出した自分の唇の先でその子を捉えます。
半分ほど口に入れ、パクッと二分割にするのが僕の流儀。
二分割にすることで、後半分は、もう一度、ラー油たっぷりの醤油を付け、楽しめるからです。

今まさに開ききった僕の餃子二分割マシン、まるでホオジロザメが獲物を噛み切るかのごとく無情にも閉じられていきます。
前歯というのは、よく出来ていて、そこそこ熱いものでも難なく噛み切ることが出来ます。
そして、その後の「口」の構造もよく出来ていて、万万が一、とても熱いものだったとしても、今度は、口の中に急速に外気を吸入することで、熱さを緩和するという技術が備えられています。
そして僕は、その技術に関しては、もし外気吸入式口中熱回避技術国家資格なるものがあれば第一級間違いなしなのです。

おごれる人も久しからず
謙虚であれ
教育に飽和点無し
棚から牡丹餅
馬の耳に念仏
尊敬するのはフランシスコ・ザビエル

口周辺に無音のサイレンが鳴り響きます。
超熱い感じ。確かに熱い。間違いなく熱い。。。が、いつもと違う。何かが違う。
その0.42秒後、僕は、その二分割されつつある餃子の前半部分を咥えながら、少なくとも外気吸入式ナンタラの技術が適用できないという事実を受け入れざるをえないと考え始めました。
何故なら、二分割にすべく咥えた餃子の中から、□★●※(自主規制)に匹敵にする高温に熱せられた汁が、あろうことか、口の中にではなく、口の外側上下、そう、僕のグラマラスでキュートだと評判の唇の上下先端部分に溢れ出たのです。

僕の脳は一気にフル回転を始め対処方法を瞬時にリストアップします。
a.残り後半分も含め口の中に放り込む
b.全て一旦口から離す
c.いつも通りに分割のまま食す
d.その状態で冷たいものを口に含む
e.特に何もせず被害状況を判断した上で適切な処置を施す

aは少なくとも唇外側の被害には何ら改善の点が見当たらない
b、cも同様
d、、、、さっきゴクゴクし過ぎたため既にビールが空。。。その上、お冷が出でない。

ということで、昭和生まれの大人らしく、ここは、額を流れ落ちる冷や汗、いや熱い汗を感じながらも何事もなかったかのような表情で後半分を口から離し、前半分を咀嚼する。
悔しいのは、超熱かったはずなのに、その汁達は、既に僕の唇に熱を伝達し、テーブルに染みを残し、何滴かズボンに香りと共に吸収され、もう口に入った分は外気吸入式ナンタラ技術を駆使するまでもない温かいだけの肉の塊となっていたのでした。

次の日、雛人形の口紅の如く上下唇の中心だけが真っ赤な部分に視線が集まるのを気にしつつ、視線が四川料理の火傷に集まる、なんて事を考えながら、何事もなかったかのように出張先での仕事を終えたのでした。

あれから数日、何度か唇の表皮が生まれ変わり、かさぶた状になり、今も、かさぶたの切れ目から血が滲み風が沁みる度に、避難勧告に従い遠く四川へ非難しているであろう行きつけの店の人達の顔を思い出すのでありました。
お願いだから、早く、帰ってきてね。

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