金曜日, 7月 18, 2008

太陽と北風:ドーパミン型/ノルアドレナリン型モチベーション

職場、組織で大切なもの、絶対に失ってはいけないものは何か。
それはモチベーション。
お腹がすかなきゃ食べられない、モチベーションが無ければ仕事は出来ない。


モチベーションは個人個人が感じるもの。
だから一人一人が違うモチベーションを感じていて、違っていてもいい。
例えば、休日の楽しみが仕事のモチベーションの人もいれば、給料が仕事のモチベーションだったり、家族的雰囲気がモチベーションだったり、仕事大好き!がモチベーションだったり、その組み合わせだったり、一人一人違うのは当然です。


とはいえ、職場全体が総合的に「モチベーションが高い」状態でなければ組織の力なんて発揮できないでしょう。
職場の半数以上がモチベーションが低い、そんな状態になると、モチベーションハザードの状態になり、終身雇用を放棄した会社では離職率がどんどん上がっていきます。
あ、終身雇用もモチベーションの一つなのかもですね。


個人個人様々なモチベーションがある中で、モチベーションの低い人が増えると言うのは、その組織の運営状態や組織の人(主に上流、管理職)に致命的な欠陥があるのだと思います。よく、モチベーションの低さを、その組織に所属する人たちの意識の低さとすり替える管理者がいますが、それはあり得ません。
管理者しか職場のモチベーションをコントロールできないのですから。給料を決めるのも、残業を奨励するも削減するのも、自由に発言できるのも、直接関わろうが関わるまいが、管理者と呼ばれる人の責任なのです。

モチベーション低下で最も怖いのは、モラルすら崩壊する事です。
モチベーションハザード→離職率の上昇→利益低下→職場環境の劣悪化→更なるモチベーションの低下→→→「モラルハザード」による組織崩壊
です。持続可能な会社であり続けるためには末端組織所属員のモチベーションが必須なのです。



モラルハザードまで至る例。
あるお菓子会社。値段の割りに可愛らしくて美味しいケーキを作って全国展開していたとします。
工場でも売り場でも、社員もパートの人も、仕事に誇りをもって活き活きと仕事しています。
経営状態は、既に市場も飽和しており、それほどの伸びも無い代わりに、堅実な経営状態が続いていました。
ある時、経営者が交代し、体育会系的経営で元気よくなるぞーみたいな事になりました。
そこからこの会社の不幸が始まります。
現場には強烈なコストダウンの指令が降りてきます。最初の頃こそ、元々の無駄を削る事でなんとかしのいでいましたが、全国の工場、直売店舗、それぞれでコストダウンを競争するようになっていきます。
いつしか、賞味期限の扱いを誤魔化したり、多少の雑菌を見てみぬ振りをしたり、そんな事が常態化していきました。

この時、一番の問題は現場の一人一人の社員なりパートの方なりへのモチベーションへの影響です。
以前は工場などでは従業員が自社製品を喜んで安価に買って帰って家族と食べていました。しかし、これもコストカットの対象となり、それほど安価でなくなったばかりか、そもそも賞味期限のごまかしや雑菌の取り扱いの裏を知っている従業員は「自社製品だけは家族に食べさせない」という意識に変わっていきます。

自分の家族に食べさせないようになってから、製造現場では、「食品を取り扱う」意識は一気に低下します。「値段のつくモノ」を作っているだけです。
もはや、無視できない品質にまで製品の品質は低下していきます。
この状況に正義感のある従業員は管理者にクレームしますが無視されます。結果、正義感の強い人は辞めていきます。モチベーションの低い人が残るため、後から採用される人も長続きしません。
製品の品質は以前の状況では「あり得ない」レベルにまで落ちます。もう、腐ってたって平気です。
こうして、この会社の製品の品質がいつか公の場に明らかになった時、この会社は、もはや存続できない状況となるのです。
ここまで書いてきて、これって、大戦の日本の「過ちに気がついても後戻りできない組織」にも共通しているような。。。



さて、話を元に戻します。

人のモチベーションは「不快なことを避ける」「快適な事を追う」の二種類によりモチベーションが上がったり下がったりするのだそうです。
「不快な事を避ける」(怒られる:ノルアドレナリン型モチベーション:北風)に起因するモチベーションは短期的にはすごい効果があるそうです。しかし、長続きしないようです。
「快適な事を追う」(褒められる:ドーパミン型モチベーション:太陽)に起因するモチベーションは短期的には特に変化が無いように見えるのだそうです。しかし、長期的には着実に効果が出るのだそうです。



さて、北風的なものの例。
●朝礼でゲキを飛ばす
普通の人は、きっと、朝はそんなにテンションは高くないものです。少なくとも私はそうです。
そんな朝礼で、飛び上がるほどビックリするような大声で「オハヨーっ!ゴザイマスっ!」などと叫ばれ、その後、「声が小さいですよ!もう一度!」などと言われたりすると、何か特別なイベントの日ならまだしも、毎日ではもはや元気が出るどころか、お腹が痛くなって帰りたくなります。
●過度に競争心をかきたてる
少数精鋭を育て、その精鋭が事業を引っ張っていく、そういう職場であればそれも良いかもしれません。
しかし大人数で組織的な成果を出していくような職場の場合、多少は競技種目を増やしても大概トップグループには同じ人たちが顔を連ねる事になります。
これは、言い換えれば、競争をすればするほど多数の人は「自分は賞は取れない」というネガティブな感覚を積み重ねる事になります。種目を増やして毎日やればやるほど多数の人たちにとっては逆効果なのです。
●精神論(厳しい系の精神論)
精神論、いいですよね。私も否定するものではありません。
しかし、精神論は一人一人の目をきちんと見て、親が子供に伝えるように気持ちを伝えていかない限り、伝わりません。
1対Nで精神論をぶつと、言われたほうは、いいとこ「なんか暑苦しいからやってあげるかな」ぐらいのものです。自分で率先して取り組むような気にはなかなかならないものです。
●権威主義、目上主義
先輩を立てるべき。これも基本は正しいです。私もそうしてます。多分。(汗)
しかし、自分が目上の人には実践すべきですが、自分の(役割として)下流にいる人に対して要求してはいけません。
職場は、いろんな歴史、いろんな経緯、いろんな経験を積んできた人たちの集まりです。
どんな立場の違いであっても、お互いに相手をリスペクトするという意味で、先輩/後輩の論理は危険です。

ということで、管理者は多数を相手にする限り、日常では北風を武器に使ってはいけないのです。
ドーパミン:太陽に勝るものなし。
ノルアドレナリン:北風=日本的体育会系的なものは短期決戦に取っておこうっていう話でした。

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