日曜日, 7月 20, 2008

侵入者



僕と仲良くしたがっているのはホオグロヤモリらしい。

ここのところ毎晩である。
何がって、ヤモリ君、ヤモリさん、ヤモリちゃん、ヤモリ様、ヤモリご一行様、ヤモリお礼参り、ヤモリツアー、とにかく毎晩といえばヤモリに決まっているのである。

家に帰ってきたときに、玄関にへばりついていた事がある。
風呂に入ったとき、天井に張り付いていた事がある。
もはや、窓ガラスの外に張り付いているのはどーでもよい。夜は窓は開けないのだ。
しかし、しかししかし、夕べは子供ヤモリ(どうも、一ヶ月ほど前からチッチッチッと深夜に激しく泣いていたのは子作り中だったのか??)である。窓の内側である。そう、子供ヤモリはサッシの隙間ぐらいは楽勝なのである。
※写真はチビたち。大人は肖像権を主張するので撮影していません。(怖いわけではない)

一昨日の玄関に張り付いていた奴も子供。
この子は尻尾が無かった。その前の晩に窓ガラスの内側で発見して、発狂しそうになった僕がほうきで追い払ったときに負傷した奴だ。その千切れた尻尾がいつまでも動いていたのは、もう、忘れたい記憶No.3ぐらいの記憶になったのだ。

そして、今夜。
日中は暑いから、家の中にいるとクーラーガンガンで、不健康極まりない事になるのでチャリで隣の隣の町まで出かけていた。フルーツ村みたいな果物沢山取れまっせ、的な村。
そんなこんなで汗だくで帰ってきて、床屋に行って、シャワーを浴びて、さぁ、ご飯の支度、大家さんから貰ったナーベーラー(若いへちま)を料理しようとしていたときの事件だ。
善良な市民。温和で友好的で近所の評判もよく会社でもなかなかの逸材な人物。
休日も穏やかな一日を過ごす、なんだったらうちの嫁に、あ、おじさんじゃあ嫁には迎えられない、、、つーぐらいの僕に神は試練を下さった。


ちらっと見た台所の床まである大窓。
はいはい、いますね。ヤモリ君。
窓に張り付いてるのなんて、見慣れたものです。「オッス、切っても生えてくるのは尾っす」ぐらい大人のジョークだって言い合える仲。
しかし、、、えーーーーっ、何で君はお腹を見せずに背中を見せているの?
おかしいでしょ、ガラスに張り付いたら、お腹を僕に見せるでしょ。
だいたい、君は大きいよねー。15cm近くもあるし、大きく肥えてるし、よく育ったよねぇ。
、、、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、、、、
ΘΣΕΔⅡλ○△×ぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぉぉぉぉぉぉおおおおおおおーーーーーーーっ!
君は窓の内側に張り付いている?
いや、そんな事はないよ、背中にも吸盤があるんだよ、、、、、って言ってくれーーーーっ!


はい。内側にしっかりいました。
子供じゃありません。親です。
警察に電話しようかと思いました。いけませんか?
税金を大人のヤモリの不法家宅侵入罪で訴えてはいけませんか?


相手は大人です。僕の奇声にはビクともしません。
よく考えました。最初にすべきは、「話し合い」だと悟りました。
相手が不法侵入にもかかわらず、大人の僕は、お願いしました。
「出ていって頂けますよね?」「窓を開けたら出て行くつもりだったんですよね?」
普段の1.3倍ほど手を長く伸ばし、窓のロックを外しにかかります。
ロックは二箇所あります。
まず一箇所。
ガラスに振動が起こります。ヤモリ的にはマグニチュード3クラスの「くすぐったい」ぐらいの震度のようです。ちょっとだけ移動します。

「よしよし、後一つロックを外したら開けてあげるね。」

もう一箇所のロックを外にしかかります。
爆発物処理班の気持ちが良くわかります。
それにしても奴はすごい身体能力です。僕が彼のように垂直のガラスに張り付いていられたら、北京オリンピックに出ていることでしょう。
そんな悠長な事を考えている余裕などないのですが、彼は、何を思ったのか、チョロチョロと移動します。なんと、、、、、次のロックの近くにです。
仕方ないので、腕をさらに伸ばし、多分1.5倍にちょっと足りないぐらいまで伸ばし、ロックを外します。

今度はマグニチュード4クラスの「じっと立っていられない」ぐらいの震度だったのでしょう。
その揺れに対し、僕が彼のように出来たら北京オリンピックで金メダルも夢じゃないであろう俊敏な動きで、ガラスの上をスラスラと音もなく移動します。
その動きに負けない瞬発力で、僕も後方へ1.5mほどジャンプします。負けられません。


さて、爆発物処理班は仕事を終えました。ロックは外れています。
しかーし、奴もあっぱれ、その時、既に天窓へと移動しています。これは、いけません。ありえません。僕は下の窓(何窓って言うのかわかんないけど、人が出入りできる床までの大きな窓)を開けられるように危険手当も請求せずに爆発物処理班の仕事をやり終えたのに、天窓に移動なんて、そりゃないぜベイビー。

しかたありません、爆発物処理班は既に帰りました。
僕は、今や、カタクシンニュウシタヤモリヲオイタテル専用となった「必殺ほうき」、を持ち出します。
窓をちょっとだけ開けます。(一杯あけたらどんだけ入ってくるのか、その恐怖からちょっとしか開けられません。)
ほうきで、天窓の彼のそばを刺激します。マグニチュード2.5程度の刺激です。
あろうことか、彼は家の天井近くの壁に移動します。
「そっちはダメ~~~~~」
この家に僕一人だとしても構いません。
ちゃんと発声します。大きな声できちんと話します。
「そっちはダメだって言ってんじゃーんっ。頼むよぅ。」
基本は、話し合いです。語りかけます。

ほうきで彼の進行方向を邪魔しながら、格闘3分、ようやく、彼は開いた窓の隙間から外に出ます。
僕は勢いよく窓を閉めます。



・・・・・・・窓の外は網戸。
彼は網戸とガラスの間で、「だから、どうしろっていうんだよぅっ」と網戸に張り付いて、やはり、背中と目をこちらに向けて訴えます。
その目が一瞬、ニヤッとしたように見えたのは気のせいでしょうか。
僕は、「入ってこられるんだから、出られるでしょう。よっ、金メダル!」と励まし、カーテンを閉めました。




30分ほど経って、カーテンを開けると、おとなしくさっきの場所に張り付いてました。
仕方ないので、「動くんじゃないぞ」と念じ、窓を開け、網戸をずらしてあげました。

この分だと年内には、きっと僕の超プライベートゾーンまでやってくるに違いありません。
もう、僕は、ヤモリと暮らしている事を認めるしかありません。
いずれ僕はヤモリで出来ているなんてことになるのかもしれません。
そういえば、今の僕は、オトコヤモリって言うんでしたっけ?オトコヤモメ?ヤモリ?

それまで、なんとか話し合いで解決したいものです。
※小動物に怯える生活は、「Tシャツの背中のタグがくすぐったいだけなのに飛び上がる」「携帯着信のバイブに飛び上がる」などのように僕をまるで、小さい飛び上がる虫、のような存在にしていきます。
※※ナーベラーは炒めてもお味噌汁なんかの具にしても美味しいです。ナスと同じような感じで「使える」野菜です。
※※※床まである大きい窓は「掃きだし」っていうそうです。
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